中小企業の経営者・人事へ 「うちの社員は元気」と思っている会社ほど危ない理由

「うちの社員はみんな元気だから、メンタル対策は必要ない」
「ストレスチェックも問題なかった。うちには関係ない話」

中小企業の経営者・人事の方からよく聞く言葉です。

しかし、実際にメンタル不調による休職者を出した企業の多くが、「まさかうちが」と口をそろえます。

私は産業保健師として、これまで多くの中小企業のメンタル対策に関わってきましたが、「元気そうに見える職場」ほどリスクが潜んでいる、というのが現場で見てきた率直な実感です。

本記事では、なぜ「うちの社員は元気」と思っている企業ほど、ある日突然休職届を見ることになるのか、その理由と対策をお伝えします。

理由1:本人も「自分のストレス」に気づいていない

労働安全衛生総合研究所などの研究で、ストレスが高い人ほど「自分はストレスを感じていない」と回答する傾向があることが報告されています。

なぜか。それは、ストレスが慢性化すると、感覚が麻痺するからです。「これが普通」と思い込んでしまい、自分が限界にいることに気づけない。

責任感が強く、優秀な社員ほどこの傾向は強くなります。だから、上司から見ても「あいつは元気にやってる」と見える。本人も「大丈夫です」と答える。そして、ある日突然倒れる。

「元気そうに見える」は、安全のサインではありません。可視化ツール(数値化されたストレス測定など)を使わないと、本当のリスクは見えないのです。

理由2:周囲が「言いづらい雰囲気」を作っている

社員が「最近しんどい」と言える職場は、実はそれほど多くありません。

・忙しそうな上司に、自分の弱音を吐けない
・「みんな頑張ってるのに自分だけ」と思って言い出せない
・「相談したら評価が下がるのでは」という不安

これらの空気感は、経営者からは見えません。「うちはオープンな会社だ」と思っていても、社員から見ると「言ったら損する」と感じている。このギャップが、休職リスクを大きくします。

経営者の方には、「うちは大丈夫」ではなく「うちにも見えていない部分があるかもしれない」という前提に立っていただきたいのです。

理由3:休職者1人のコストは、想像以上に大きい

社員が1人休職した場合、企業が負担するコストは、給与・社会保険料・代替人員の採用や派遣費・引き継ぎコスト・周囲の社員のモチベーション低下による生産性低下などを総合すると、1人あたり100万円〜数百万円に上ることがあります。

さらに見えにくいコストとして、

・休職者の上司が自責で潰れてしまう
・周囲のメンバーが「次は自分かも」と疲弊する
・採用市場で「あの会社は休職者が多い」と噂される

こうした影響は、決算書には載らない。でも確実に経営を蝕んでいきます。

対策は「予防」に投資すること

不調者が出てからのケアより、不調にしない仕組みづくりのほうが、コストも時間も10分の1以下で済みます。

中小企業でも実施できる予防策として、

・本人も気づかないストレスを可視化する測定の導入
・社外の保健師・カウンセラーへの相談窓口設置
・管理職向けのラインケア研修

これらは、社員10名規模の企業から導入できます。「うちの規模ではまだ早い」と感じる方こそ、早めの予防が大切です。

まとめ

まとめ:「うちの社員は元気」と思っている経営者・人事ほど、

・本人がストレスに気づけていない(自己感覚が麻痺)
・社員が言いづらい雰囲気が、見えないところで作られている
・休職者1人のコストは想像以上に大きい

というリスクを抱えています。

対策は「不調者が出てから」では遅い。1人あたり年間数千円〜の予防投資で、休職コスト100万円超を防げる計算です。

まずは、本人の自己申告に頼らない客観的なストレス測定から始めることをおすすめします。


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